福岡教育大学 教材開発プロジェクトの中で、ワークショップ「廃材からの学び〜時間を旅する楽器工作室〜」を開催しました。

福岡教育大学 教材開発プロジェクト「くらしと深くつながる教材の探索と創出」の中で、「廃材からの学び~時間を旅する楽器工作室~」と題したワークショップを2012年3月11日(日)14:00~17:00に開催いたしました。廃材楽器制作ユニット「サウンドリノベーション・バンド」(九州大学藤枝研+冷泉荘)とのコラボレーションのワークショップです。冷泉荘のかつての建具や生活廃材に出会うことではじまった廃材楽器の活動。音によって、あるいは楽器として生まれ変わらせることで、新たな形・価値を得ていく廃材。その行為をサウンドリノベーションとよび、阿蘇の旧・上色見小学校(阿蘇フォークスクール)、箱崎ふ頭(NPO法人 エコねっと福岡)などそれぞれの土地の風土/特色をもった廃材を楽器へと変えていっております。

使われなくなり廃棄されていく廃材をつぶさに観察し、音の側面から可能性を引き出し、組み合わせ、楽器として音響的・造形的にもおもしろい姿へと変えていく活動は、創造的かつ道徳的で、図工・音楽の境界をこえた新たな教材となります。教材開発プロジェクトの福岡教育大学 技術教育講座・平尾健二先生から声をかけていただき、実現しました。平尾先生は、ペットボトル稲の栽培やペットボトルを利用したピザ作りなどユニークな教育プロジェクトを実践されています。(廃材楽器でも、プラスチックのボトルは太鼓や共鳴体、土台などさまざまな形で使っており、ペットボトルの可能性の広さにはいつもおどろかされています。)

さて、当日のワークショップは主に3部構成で展開していきました。第1部「廃材とは 楽器とは」では、サウンドリノベーション・バンドがこれまで制作した廃材楽器を紹介しながら、廃材との関わり方、楽器のアイディアの源をお話。第2部「廃材で楽器をつくってみよう」では、塩ビ管と風船を用いた笛、障子の組子を利用したスピリットキャッチャー作りを行いました。第3部「廃材楽器で合奏しよう」では、みんなで作った楽器、周囲に展示された廃材楽器などをもちいて、みんなで合奏です。

まずは、発音原理や仕掛け、形や素材を選んだシチュエーションなど廃材楽器の紹介から。ぼくたちが作った廃材楽器は、形や響きを気に入った素材を組み合わせていくことが基本ですが、その過程でスパイスのように恋愛や交通事故、聴いていた音楽など個人的なシチュエーションが割り込んできて、独特な形が生まれています。楽器を紹介することが、制作の現場をそのままお伝えするような形になるので、思い出を紹介しているような心地となります。きっと、ひとのくらしに密接に関わってきた廃材たちに触れることで、日常を重ねながら制作をしているのだと思います。また、楽器の形がまるで妖怪の付喪神のようだといったお話も。人々が長年使うことで妖怪となったのが付喪神ですが、奇妙で有機的な形から感じる生命感などもあわせてお話いたしました。

ゆったりといろいろと楽器を紹介したあとは、少し即興演奏を行いました。3月11日ということもあり、冷泉公園でも震災の時間にはサイレンが鳴っておりましたが、ぼくたちもみんなで楽器を手にとり、「できるかぎり静かに」と祈りをささげる即興演奏をしました。1音1音が丁寧に奏でられ、本当にとても静かな時間でした。津波によって一瞬で見慣れた風景が廃材へとかわってしまった被災地。この祈りの音が、東北へと届きますように。

その後は、パイプと風船を使った笛づくりと、障子の組子と輪ゴムを使ったスピリットキャッチャー作り。スピリットキャッチャーはなかなかコツをつかむまで(スピリットをつかむまで)音がならなかったり、風船の笛はどんどん改造していったり。どちらも原理は単純ですが、思った音になるのはむずかしく、みなさんのめりこんでいきます。

最後に、みんなで合奏。スピリットキャッチャーは室内で振り回すのは危ないので、火災報知器や参考楽器として平尾先生が持ってきた竹の楽器・アンクルンを代わりに手に取ります。フィリピンのカリンガ族の演奏スタイルを参考に、それぞれがリズムパターンを繰り返し、ひとりずつ重ねていく演奏です。自分のリズムをキープしているだけですが、音程が異なる楽器が重なることでメロディーが生まれ、それが刻々と変化していきます。このときの演奏は、以下のプレイヤーで聴くことができます。

ちょっぴりおかしくって、ほっこりする音楽となっています。

じつはこのプロジェクト、今回のワークショップから続きが想定されています。取り壊しとなる建物の廃材を利用して1日がかりで廃材発掘→廃材楽器制作という大ワークショップを開催する予定となっています。「どんな廃材を探すのか」「発音部分はどうするのか」「どんな楽器をつくるのか」「どんな組み合わせ方ができるのか」、今回のワークショップを通じてそれぞれが学んだこと・アイディアを通じて、どんな楽器が生まれてくるのか。

開催はゴールデンウィーク前の4/29(日)を予定しており、現在調整中です。

新たな廃材楽器の試みを、お楽しみに!

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