ビルストック文化の学び合い、そして発信
博多の伝統文化が色濃く残る福岡市博多区上川端町に位置する「リノベーションミュージアム冷泉荘」は、築60年をこえる集合アトリエです。もともと集合住宅として建てられた冷泉荘。建設当時は、周辺にはまだ木造家屋が並ぶ中、近代的な鉄筋コンクリート造の建物でした。冷泉荘の前を通りかかった方からは「憧れてよく遊びに来ていたよ」という話も。
しかし、老朽化に伴い空室が目立つとともに建物もスラム化。そんな中、2006年に起死回生の一手として一棟まるごとオフィスビルへコンバージョンします。いまでは「ひと」「まち」「文化」を大切に思う人々が集まり、再び賑やかなビルになりました。
冷泉荘のオーナーである吉原住宅有限会社は、「福岡の古い建物を大切にする考え方の実践(ビルストック活用)」を運営の基本理念に掲げています。そのため、冷泉荘では改修やリノベーションの際も、できるだけ使えるものは使い、工事の痕跡もあえて残しています。冷泉荘が歩んできた過程を、目に見える形で建物に刻み込んでいく。「ここは修理をしたんだな」「以前入居していた人はこんな内装が好きだったのか」と冷泉荘を訪れた方に、その痕跡をみて想像して楽しんでもらう。”リノベーションミュージアム”とは、そんな「冷泉荘の建物そのものを、まるでリノベーションの博物館のように楽しんでもらいたい」という想いから、名づけられました。
冷泉荘の文化祭「れいぜん荘ピクニック」
冷泉荘では毎年1〜2回オープンアパートイベント「れいぜん荘ピクニック」が開催されます。この日は、マーケットや各アトリエで開かれる入居者さん企画のイベントなど、冷泉荘をまるごと楽しめる一日。その中でも目玉は、管理人さん企画の「管理人解説付き冷泉荘ぐるっと一周ツアー」!冷泉荘のあゆみや改修ポイント、入居者さんの紹介など、ぱっと見ただけではわからない、いろんな話を聞くことができます。なんと一棟まわるだけなのに、長いときで1時間半もかかるという充実っぷりなのです。
築100年を目指して
冷泉荘では、2011年に耐震補強工事を実施。これによって、コンクリート強度的には築80年までもつ建物になりました。2012年には、これら一連の活動に対して「第25回福岡市都市景観賞活動部門」にて部門賞をいただくことができました。あとは、私たちがどう使っていくか。築100年を目指して、冷泉荘と私たちの挑戦はまだまだ続きます。
冷泉荘へのお問い合わせ
お急ぎの場合はお電話でもお受け致しております。
リノベーションミュージアム冷泉荘 事務局
〒812-0026 福岡県福岡市博多区上川端町9-35/A-12
TEL&FAX 092-985-4562
【営業時間】 AM11:00~PM19:00
【定休日】 毎週火曜日
冷泉荘のあゆみ
年 | できごと | 内容 |
1958年 | 冷泉荘誕生 | 不動産経営会社「吉原住宅有限会社」
(設立1965年)が冷泉荘を取得。 運営スタート。 |
2000年頃 | 老朽化により、空室が目立つように
なるにつれ、建物自体もスラム化。 まちのブラックスポットに。 |
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2006年 | 冷泉荘一棟
コンバージョン |
山王マンションでの経験を活かし、
吉原住宅は一棟まるごとオフィスビルへ コンバージョンに着手。 まずは若手アーティストに向けた プロジェクト(期間3年間)を実施。 |
2009年 | 第4回福岡アジア美術
トリエンナーレの 街なか会場に |
若手アーティスト向けプロジェクト終了後、
一棟まるごと空室になったタイミングで、 古い建物を活かすかたちで、 福岡アジアトリエンナーレの会場として 提供。様々な展示がされ、 福岡のアートやカルチャー発信の 拠点としての可能性を見出す。 |
2010年 | 冷泉荘一棟
コンバージョン “「リノベーション ミュージアム冷泉荘」 誕生” |
実験期と準備期間の4年間を経て、
現在のビルストックの活用を 基本理念とした 「リノベーションミュージアム冷泉荘」 がスタート。築 100 年を目標に 「ひと」「まち」「文化」が 集まるビルをコンセプトに掲げた。 |
第一回
冷泉荘ピクニックを 開催 |
リノベーションミュージアム冷泉荘の
お披露目として、各アトリエが オープンになる「冷泉荘ピクニック」を 2日間にわたり開催。 以降年に1~2回オープンアパートイベント 「れいぜん荘ピクニック」として定期開催 |
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2011年 | 博多松囃子・稚児舞
の奉納を受ける |
博多のお祭り「どんたく」の
起源ともいわれ、 1179年に始まった「博多松囃子」の 稚児舞流(国無形民俗文化財)の奉納を 初めてお受けすることとなり、 冷泉荘前で舞をご披露いただく。 以降、毎年冷泉荘にて 舞の奉納をお受けしている。 |
耐震補強
& 大規模改修 工事実施 |
築100年を目指し、耐震補強工事と
大規模改修工事を実施。 それに伴い、間仕切り壁を 取り除くなどして、 建物全体利用の最適化に着手 |
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シェアオフィス
「THE SHARE 冷泉荘」 オープン |
4.5畳の各ワークスペースと
共用部からなる、シェアオフィス 「THE SHARE 冷泉荘」 (「引力の間」)をオープン。 働き方が多様化する中で、スタートアップや 異業種との交流のある ワークスペースの提案を試みた。 (2019年4月終了) |
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2012年 | 第25回福岡市
都市景観賞・ 活動部門に おいて 部門賞を受賞 |
福岡市民の景観に対する意識を高め、
まちへの愛着を深めて もらうために創設された 「福岡市都市景観賞」(昭和26年創設) の活動部門において 部門賞を受賞。 (※部門賞とは 地域の魅力を高めている 企画や活動に贈られる賞) |
2014年 | 第5回福岡アジア美術
トリエンナーレの 街なか会場に |
2009年に続き、今回は冷泉荘の
1室を福岡アジア美術 トリエンナーレの会場として提供。 期間中、インドの作家 Prabhakar Pachpute (プラバーカル・パーチュプテー)さん によって、木炭のドローイングによる インスタレーションが制作される。 |
2016年 | 裏外壁の補修工事実施 | 外壁改修工事において、
57年生きてきた姿をそのまま残したい という想いから、軍艦島の保全にも 検討されているという 特殊コーティング材を採用した 「保存」的な改修を実施した。 |
2017年 | 冷泉荘屋上にて
「たのしイネ」実施 |
天神パークビルにて
2011年からスタートした 都市で稲と触れ合うプロジェクト 「たのしイネ」プロジェクトを 冷泉荘の屋上で実施。 例年以上の豊作となり、 ビルの屋上活用の可能性を またひとつ見出した。 |
2018年 | 築60年記念
トークイベントを開催 & 記念グッズを作成 |
冷泉荘築60年を祝うイベントを
れいぜん荘ピクニックの中で開催。 あわせて、築60年記念として 冷泉荘オリジナルスリッパと 湯浴みタオルを制作。 記念グッズは冷泉荘にて引き続き販売中。 詳しくは冷泉荘オリジナルグッズページへ |
2019年 | 冷泉荘屋上にて
「夕涼み会」 を開催 |
夏の終わりの屋上にて、
持ち寄り食事会や、 FUKUOKA ART NINJAさん特製 「ランタン・ツリー」の点灯、 屋上卓球大会などを開催。 50人を超える方々がご参加。 冷泉荘元入居者さん、 スペースRデザイン管理物件の 入居者さん、ご近所さんなど、 多様な人たちが交流を楽しんだ。 (当日の様子>>「夏の終わりに夕涼み~冷泉荘屋上 夕涼み会」) |
2020年 | 屋上防水工事実施 | 屋上全面を
ウレタン塗膜防水(通気緩衝工法)実施。 工事は冷泉荘の裏庭側の 外壁改修防水塗装工事をしていただいた、 軍艦島の保存にも名乗りをあげている 株式会社MBSさん。 (工事の様子>>「冷泉荘屋上、ウレタン塗膜防水工事いたしました。」) |
2021年 | 「冷泉荘
YouTube チャンネル」 開設 |
冷泉荘の入居者さんや
イベントの紹介を行う YouTubeチャンネルを開設。 管理人杉山自らが撮影・編集を行う。 |