まちなみアート~吉田初三郎の世界~ 展

吉田初三郎が描いた鳥瞰図の展示が終りました。

NPO法人福岡ビルストック研究会主催にて開催された本展示は、冷泉荘ギャラリーにて2010年5月1日から5月31日
まで開催されました。
本企画は、アソシエ益田啓一郎氏との出会いから始まりました。

実に40点にも及ぶ鳥瞰図と美人画は、圧倒するものがありました。
大神宮横町という博多の路地に面した冷泉荘のギャラリーは、窓を潰さず開かれたギャラリーです。
会期中はどんたくも開催され、初三郎氏が描いた時代と変わらない祭事と、かわってゆくまちなみが実感できました。

主に昭和初期の福岡市をはじめ、近郊の都市の鳥瞰図が多く展示されました。
どれも美しいまちなみ。
吉田初三郎氏の鳥瞰図は、クライアントの意向を的確に捉え、わかりやすく、その土地の特徴を的確に表現し、どこかユーモアで人間味あふれるものです。

5月7日には、企画者の益田啓一郎氏をお招きしてトークライブが開催されました。

初三郎氏は単に意匠やネームバリューでまちを切り取ったのではなく、現地を何日もかけて歩き、そのまちの中で特徴ある建物をスケッチしたそうです。
つまり全国的に有名なデパートや著名な名刹だけではなくて、そのまちを歩くときにランドマークとなるようなものを鳥瞰図の中に配置していったのです。
それは即ちまちを歩かないとわからない事。

この初三郎スタンスを象徴するような鳥瞰図があります。
広島の原爆投下時のものです。
私たちはきのこ雲が上がる様子を想像すると思います。
初三郎氏は原爆投下後、広島を数ヶ月かけて歩き回り、被爆者への聞き取りをしました。
その聞き取りを基に出来上がった鳥瞰図は、原爆投下直後の広島の様子です。
この図に描かれている様子は、私たちが見たことが無いものでした。
※アソシエ益田さんが出版している『美しき九州~「大正広重」吉田初三郎の世界』に掲載されています。

全国各地の行政や企業から鳥瞰図を依頼され、描き続けた吉田初三郎氏は、後にこの国の観光資源の豊富さに気が付き、観光をビジネスにすることを考えます。まだ観光という言葉があまり認知されていない時代です。
全国の観光地を紹介した雑誌も発行します。
観光大国の先駆けとなったのです。

簡略的に紹介しましたが、今回の展示においてこの吉田初三郎さんの本質に迫ることができました。

更に、都市として急激に発展した福岡。
この鳥瞰図に描かれている時代から数十年しか経過、マッチ箱のようなビルディングが乱立しました。
初三郎さんが現代社会を描いたらどうなるのか。
美しく描けるのか。

この美しさの背景は、まちを構成する建物自体が美しく見えているだけではなくて、そこに暮らす人々やまちに対する愛情からくるのではないか。吉田初三郎さんの展示を通して、私たちはもっとまちを鳥瞰して愛情もって住む(働く)べきだと感じました。

■来場者:約100名
■来場者の感想(一部抜粋)
・子供が、うちは何処?と探していました。
・母校奈良屋小学校があって良い思い出です。
・九州一円の観光、興味がわいて来ました。
・初三郎、初めて知りました。
・写真とは違う魅力、再発見しました。
等々

レポート:管理人山本

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