廃材楽器 in ミッドタウン

2011年1月7日より30日まで開催されている、九州大学大学院芸術工学研究院の企画・運営による東京ミッドタウン・デザインハブ第25回企画展「にんげんをしあわせにするデザイン」(http://www.design.kyushu-u.ac.jp/g-parn/g_parn/web_content/event_hub_shiawase.html)。出展作品のひとつとして、九州大学藤枝研究室と吉原住宅のコラボレーションとして、冷泉荘の廃材を利用した楽器”サウンド・リノベーション”を展示中です。1月7日の17:00~18:00にはオープニングイベントとして廃材楽器のデモンストレーションがあり、ぼくも設営&デモンストレーション出演で東京に行ってまいりました。

六本木ミッドタウンにあるDESIGN HUB。ここからみえる景色が東京らしさが凝縮されています。

デザインは私たちのしあわせにどんなことができるのか?デザインと私たちのしあわせについて考えた展覧会。展示会場は段ボール1,500個で構成されています!市松模様が美しい。会場デザインは、先日の冷泉荘でのハコザキボイスに出演していただいた近藤康夫先生。ギャルソン・シャツNYやヨージ・ヤマモトのブティックデザインなどを手がけてきたデザイナーです。人柄も豪快なのに謙虚な方ですばらしいです。近藤先生のような人柄・生き方を目指していきたいなといつも思います。

かなりの苦労がみてとれながらも見惚れてしまう美しい市松模様。

ぼくたち藤枝研究室は廃材を通して得た響きの体験を、そのまま体験してもらえるように、と冷泉荘の廃材で作った楽器たちを展示。

冷泉荘ではおなじみですが、このような”整った”空間に配置することははじめてのことなので、配置にとまどいながら並べていきます。

段ボールの市松模様と障子の組み合わせがステキです。

まばらにではありますが、展覧会開始初日の朝からけっこうお客さんがきます。その合間をぬって楽器の最終微調整(チューニング)。

17時〜18時には廃材楽器のデモンストレーション。藤枝研究室の活動の紹介、音を出すことよりも聴くことからイマジネーションをふくらませる研究・活動について話をしたあと、廃材との出会いをお話し。冷泉荘という、「生まれ変わり」をした建物のなかに、ためこまれた”過去の記憶”としての廃材。ためこまれた廃材がいりぐちまで押し寄せたその空間を開けたとき、異質な空気が襲ってきた感覚。その異界ともいえる空間の中から炭鉱を掘るように、なにか光る素材を求めて廃材の中からイマジネーションをかきたてるものを探し出していく。そして、今度は廃材そのものを叩く・吹く・変形させるなどして廃材についていろいろと調べ、関わった上で楽器的なアイディアを足していきます。廃材に導かれたアイディアもあれば、古楽器や民族楽器などのアイディアをぶつけてみて発現した廃材の特徴もあります。廃材から発せられる音に耳を傾け、振動を指や肌、唇で感じ、それらをできるかぎり強調していくように”楽器”としてつくっていきます。

そのアバウトな見た目とは違い、実はこうしたプロセスを大切にしながらつくっています。おもしろがっている部分ももちろん多いですが、そこだけにひっぱられないように、必ず廃材から導かれるイマジネーション、廃材の声ともいえるようなものを感じとってそこに呼応していくことを大切にしています。

これがいちばん重要なところなので、こんな話ができたらよかったんですけど、緊張してしまって全然言えませんでした(笑)

参加者は約30人。みんなで火災報知機を持って、廃材を実際にさわってみてもらう。過去のいろいろなワークショップでボコボコになった火災報知機ですが、叩き方や叩く位置によっていろいろな響き方をします。手でもつことで、それを体験できるかと思い、みんなに2個ずつ配っています。そして、フィリピンのカリンガ族の演奏スタイルを模倣して、みんなで合奏してみます。一人1パターンのリズムを次々に重ねていきます。30層に重なったリズムが、すこしずつ整っていくようになり、最終的に、なんとなく終りを迎えます。この終わり方がいつも好きです。音をだしながらも、音ではないコミュニケーションが行われていると思います。たしかに、一回の合奏では、いわゆる”空気を読む”感じでみんながおわっていく方向に向かうというのはありますが。今回は、一人の方が写真をとろうと火災報知機を置いたとたん、終わりが訪れた(楽器を置くという行為が、音を連れていってしまった)ように感じました。

みんなの合奏のあとは、廃材楽器制作メンバーによる演奏。即興による廃材楽器とぼくたちの関わり方のリアルタイム提示でもよかったのですが、それよりももっと一般の方にも親しみがもてるように、と3曲、カバーする形で演奏してみました。ひとつは、ぼくらの指導教官の藤枝守先生の曲で、詩人・伊藤比呂美さんの般若心経の現代訳に歌づけしたものの廃材楽器バージョン。元となった藤枝先生のメロディーは植物の電位変化から生み出されています。木の成れの果てや土へと還ろうとしていた廃材を、植物的営みをしはじめているのではと考えてリンクさせてこの曲を選んでいます。般若心経も、廃材の生まれ変わりと関連するのでは、と考えています。

次の曲は、古楽のfelixnamque。廃材と触れ合って楽器にしていく過程や、廃材楽器から生み出される音色から古楽を連想する、として選んだ曲。古代の人がいろいろな音や素材と出会い、楽器を産み出していく過程を追体験するようであった廃材楽器づくり。それと同様に、古楽というものもプリミティブとも言える廃材楽器を使うことで、いわゆる通常の楽器を用いた場合とは違った体験が得られるのでは、との思いから試みています。

最後は、おなじみ炭坑節。ぼくらが廃材を彫り出す行為そのものを炭鉱として例えていたように、ぼくたちの活動の原点に発掘があると考えています。呼ばれるように、廃材を探し出していく。炭坑節が、廃材そのものを彫り出していく行為のための歌として、とてもなじむと考えています。

廃材楽器というものを考え、でてきた3曲。

とはいえ、どちらかというと楽器ビルダー的に活動してきているので、演奏は得意ではなく、へろへろなデモ演奏でした。一部では、酷評もされてしまっています。。。もっと精進せねば。

おわったあとには、みんなでわらわらと楽器を触ります。

楽器の展示でいつも思うのが、なかなかさわってもらえない、ということ。廃材楽器でも、やはりなかなか気軽にさわってもらえないことが多いです。なんとか、そういうことがないようになった、かな?

やはり、廃材そのものにさわってもらい、直に廃材の質感や感触を感じてもらうこと、そして楽器のデザインにいろいろ疑問をもってもらいながら、なぜこうなったのかをたどってもらえると、ぼくらの制作体験を追体験してもらえるのではと思っています。

さて、ながながと思いをつづってしまいました。

展示は1月30日まで開催されておりますので、東京にお住まいの方、東京に行かれる方はぜひ一度さわってみてください。

さて、ミッドタウンの設営と演奏でほとんどぼくの東京旅行は終わってしまいましたが、福岡に戻ってくるまえに、先輩(堀尾寛太さん)が作品展示しているオペラシティのICCでの「みえないちから」展に行ってきました。学芸員の畠中さんもお元気そうでした。。。あ!寛太さんの作品の土台が、以前、藤枝先生のプラントロンで使っていたテーブル!(福岡のアルティアムでのMind in Sound展でも使っていました!)なつかしい。。。

オペラシティに向かう途中、なんとキャンドルジュンのお店があるとのことでちらりと寄ってみました。

いい雰囲気です。

そして、福岡空港にもどってきたら、山笠・東流の舁き山が!

癒しくまの松隈さんに出迎えられたような心地で、なんだかすごくほっとしました〜★

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